モーションキャプチャの基礎知識
人や物の動きをデジタル化するモーションキャプチャの種類を知り、目的に適したものを選ぶ
モーションキャプチャとは?歴史と用途を理解する
モーションキャプチャ(略称:モーキャプ)は、3次元の動きをキャプチャし、その動きをデジタル化するシステムです。元々、人の動きをPC上でデジタル化するシステムとして誕生しました。一番想像しやすいのはCGコンテンツの制作風景でしょう。CGキャラクタがまるで本物の人のように動く。
その制作の裏では、モーションキャプチャ技術を使って人の動きをキャプチャし、デジタル化。そのデータを基にCGキャラクタを動かしています。元々CGキャラクタを動かすために膨大な時間をPC上で費やしていました。モーションキャプチャ技術の発達により、モーションキャプチャで取得した人の動きの通りに動かす事で作業時間を短縮、さらによりリアルな動きを表現できるようになりました。
同様に、スポーツパフォーマンス始め、人の動作を研究する研究者の間でもモーションキャプチャは昔から使われています。モーションキャプチャを使って人間の骨格を推定し、動作分析を行っています。
人の動きのキャプチャから始まったモーションキャプチャは、人だけでなく物の動きのトラッキングも可能です。物に反射マーカーを貼付する事によって物の動きをキャプチャし、近年ではVR(Virtual Reality、仮想現実)のセンサーとしても使われています。このようにモーションキャプチャの用途は広がりを見せています。
教えて!モーションキャプチャの4つの種類
人や物の動きをデジタル化するモーションキャプチャには、代表的なものとして4つの種類があります。
- 光学式モーションキャプチャ
複数のカメラでキャプチャ空間を構築し、反射マーカーの位置をトラッキングする方式。マーカーがカメラから隠れるとトラッキングできないデメリットはあるが、絶対的な位置精度が最も高くキャプチャできるメリットがある。 - 慣性センサ式モーションキャプチャ
ジャイロセンサ(角速度計)と加速度計からなる慣性センサから動きの情報を逆算して位置や姿勢を算出する方式。ドリフト(時間経過に伴う誤差の蓄積)のデメリットはあるが、キャプチャ空間の自由度が高いメリットがある。 - 機械式モーションキャプチャ
ポジションメータやエンコーダのような回転角や変位を測定するセンサを使用した方式。全身運動をキャプチャする際は、身体の各関節間に機械的に角度を測る装置を取り付ける。 - 磁気式モーションキャプチャ
磁場発生装置を用いてキャプチャ範囲に磁場を送り、装着した磁気センサで受信する方式。磁気センサ内に内蔵されたコイルから検出される磁力線を基に位置や姿勢を求める。
どの手法を用いたモーションキャプチャが最適なのかは、 デジタル化したい対象や環境、目的によって異なります。
図でわかる!光学式モーションキャプチャの原理
光学式モーションキャプチャは、複数台の専用カメラが反射マーカーの位置を算出します。
動きをデジタル化したい対象に反射マーカーを貼付し、そのマーカーが認識できるように、専用カメラを設置します。カメラは人や物の全体の動きではなく、貼付したマーカーの位置を認識しているため、カメラからマーカーが見えるように配置、またはカメラからマーカーが見えるように貼付する必要があります。各カメラは2次元的に反射マーカーの位置を認識、2次元座標値 (X, Y) を算出します。
※反射マーカーの認識の原理の詳細は、「計測点の認識の原理」で解説しています。
カメラ1台だけでは、あくまでも横(X軸)と高さ(Y軸)の2次元でしかマーカーの位置を算出できないため、奥行きの情報が必要になります。各カメラからの2次元の情報は、キャプチャ前にキャリブレーションで定義された互いの位置関係を基に奥行き(Z軸)を算出、3次元の情報となります。つまり、1つのマーカーは2台以上のカメラから見えている必要があります。
※3次元化の原理の詳細は、「3次元化の原理」で解説しています。
参考:カメラのスペック・台数・配置の決め方 / 3次元化の原理 / 計測点の認識の原理
光学式モーションキャプチャの活用例光学式モーションキャプチャは、人の動きだけをデジタル化するかというとそうではありません。人の動きをデジタル化する仕組みを応用し、自動車・建物・橋・小型部品等の挙動の計測にも使われています。Acuity Inc.で取り扱っている光学式モーションキャプチャ「OptiTrack」は次のような様々な目的で使用されています。
- CGキャラクターCG素材を動かすための人や物の動きをキャプチャ
- スポーツパフォーマンス分析等の学術分野における動作分析のデータ取得
- リハビリテーション等の医療分野における身体動作のデータ取得・評価・フィードバック
- VRやARにおけるHMD(ヘッドマウントディスプレイ)や対象のトラッキング
- ドローンやロボットのセンシング・リアルタイムフィードバック
- 自動車部品や機械製品の変位や挙動のデータ化・評価
- プレスやゴム等の素材の伸縮や歪みのデータ化・評価
- プローブや工具の位置の高精度センシング